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ナオミは影に飲み込まれるかのように倒れ込んだ。意識は混濁し、目の前の光景が歪んでいく。 彼女はなんとか体を動かそうとしたが、全身が鉛のように重く、まるで何かに押さえつけられているかのようだった。 影はナオミの上にのしかかり、彼女の喉を絞めつけるかのように冷たい圧力を感じさせた。 息が詰まり、目の前が真っ暗になる。ナオミは必死に叫び声を上げようとしたが、声は出なかった。体の感覚が次第に麻痺していき、意識が遠のいていく。 その時、影の中から、何かがささやくような声が聞こえてきた。 「お前はここで死ぬ。誰にも助けられず、永遠にこの場所に囚われるのだ。」 その声は、耳元で囁かれるように響き、ナオミの恐怖をさらに煽った。彼女はその言葉の意味を理解しようとしたが、恐怖で思考がまとまらなかった。 ただ、逃げなければならないという本能的な感覚だけが残っていた。 突然、影がナオミの耳元で何かを呟いた瞬間、彼女は体の自由を取り戻したかのように感じ、反射的に影を振り払った。 そして、必死に床を這って玄関から遠ざかろうとした。だが、部屋の中は異様なほど暗く、まるで出口が消えてしまったかのように感じられた。 リビングの隅に追い詰められたナオミは、壁にもたれかかり、震えながら影を見つめた。 それは依然として形を定めず、まるで闇そのものが実体を持ったかのようだった。影は徐々に近づいてくる。
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