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「お願い…助けて…」 ナオミは涙を流しながら、誰に言うでもなく呟いた。 しかし、その言葉に答えるものは誰もいなかった。 影が彼女に触れる寸前、ナオミは視界の隅で何かが光るのを見た。テーブルの上に置かれたスマートフォンだった。 彼女は最後の力を振り絞って、それに手を伸ばした。画面が点灯し、かすかな光が部屋の暗闇を切り裂く。 その瞬間、影は一瞬ひるんだように動きを止めた。しかし、光が消えた途端、再び勢いを取り戻し、ナオミに襲いかかろうとした。 「くそ…!逃げなきゃ…!」 ナオミはスマートフォンを握りしめ、立ち上がった。影が再び迫ってくるのを感じながら、彼女はドアへと向かって走り出した。 しかし、ドアは開かなかった。何かがドアノブを押さえつけているかのように、びくともしないのだ。 彼女は泣きながら、ドアを叩き続けた。影が迫ってくる。心臓が爆発しそうなほど早く鼓動を打っている。 「誰か…誰か助けて…!」 ナオミが最後の希望を失いかけたその時、突然ドアが開いた。彼女は転がるように外へと飛び出し、冷たい夜風が彼女の全身を包んだ。しかし、ドアの外にも安心はなかった。 ドアの向こうには、真っ黒な空間が広がっていたのだ。そこはもうナオミの知っている世界ではなかった。無限に続く暗闇の中に、彼女は一人取り残されたような感覚に陥った。 振り返ると、ドアはもうそこにはなかった。代わりに、黒い影が再び現れ、彼女に向かって不気味な笑みを浮かべていた。影はゆっくりと手を伸ばし、ナオミを闇の中に引きずり込もうとした。 「逃げられない…ここはお前の墓場だ…」 その言葉と共に、ナオミは暗闇に引きずり込まれ、彼女の絶叫が虚しく闇に消えていった。
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