26人が本棚に入れています
本棚に追加
「……どうして私の誕生日知ってるの?」
「調べたとかじゃないですよ。さっき居酒屋で支払いの時、誕生日が書いてあるカードたまたま見えたんです。すいません……」
「やだなぁ! しょんぼりしてるの見られちゃったか……そうなの私、誕生日なのよ。別に三十過ぎるとおめでたくもないんだけどね。彼忙しい人だからさ! だから、今日は誘ってもらって暇つぶしができて助かったんだ。家族も誕生日にひとり家にいると心配するしさ。けど一人で飲みに行く勇気もないし! いやぁ~はずかしいな……そっか、見られてたのかぁ……」
恥ずかしさで、話す必要のないことまで次々と口から出る。
「……彩子さん、無理して取り繕わなくていいですよ。僕もなんか彩子さんには素で話しちゃって……いつもこんな余計なこと言わないんですけど。……だから、彩子さんも素で話して欲しいです」
静かに話す穏やかな声は、自白作用でもあるみたいだ。
溜め込んでいて誰にも言えなかった気持ちが言葉になった。
最初のコメントを投稿しよう!