1.場違いな女と過剰に適応する男

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1.場違いな女と過剰に適応する男

 セックスが好きだ。  快感に飲まれ、全てを忘れる時間が心地いい。  日常生活じゃ知ることのない、私にしか見せない趣味、嗜好。  それを知る私は、彼の特別になる。    合わせた肌の隙間が埋まると満たされる。  そう、満たされるんだ。  ──だからって、それを目的に声をかけたわけじゃない。  理由なんてわからないけど、なんとなく放っておけなかった。  「──早瀬くん? って言ったっけ? ここ出ない?」      職場の後輩に泣き付かれ、渋々参加した合コンもどきで彼と出会った。  キメの整った陶器のような肌、芸術品のように整った横顔。長いまつ毛に縁取られた黒目がちな大きな瞳。おまけに均整の取れた体はスラッとして背も高い。    かわいい顔したすごいイケメンと言うのが第一印象だった。  早瀬、というその青年は常に周りに気を配り、空いたグラス見つけると、さり気なくおかわりをオーダーしたり、相手が気遣いを察知しそうになると、楽しんでいる素振りを見せたり、気を遣わせないように気を使っていた。
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