2.誰にも言えない気持ち

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 繁華街から少し離れた駐車場へ到着すると、早瀬くんが「ここは払わせてください」と言い張るので、お言葉に甘え支払いをお願いした。  愛車の赤い軽自動車に乗り込むと、降りる時にかけていたCDの続きが流れ出す。 「ジャズですか?」 「多分ね。よく知らないわ……」 「いい曲……」  低音の女性歌手が歌う、スローテンポのその曲は、誠一郎さんの車でよく流れていた。  この曲好き、と言ったのがちょうど主任になったときだったので、お祝いにこのCDをプレゼントしてくれた。  彼からの数少ない贈り物。 「子守歌らしいわよ……」 「そうなんですか……なんか、優しすぎて泣きたくなりますね……」  早瀬くんの家は私の自宅から車で20分も離れていない場所にあった。  彼の案内で車を走らせる。 「彩子さん、飲み会でお酒を飲みもしないで全員分出すなんて、僕よりも損してるじゃないですか」  助手席の早瀬くんは、納得いかないように話し出した。 「別に損じゃないよ。飲んでないのは……彼がさ、私が外で飲むの嫌がるから。すぐヤキモチ焼くんだよね、彼」 「……誕生日なのにすぐに電話切っちゃうくせに? あっ……ごめんなさい」 しまった、余計なことを言ったとでもいうように早瀬くんは気まずそうに顔を歪めた。
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