韓国の地へ

2/3
前へ
/8ページ
次へ
路地は人っ子一人通らないかわりに、野良なのか飼い猫なのか猫が知らん顔で通り過ぎていく。 ちらりとそちらを見た優花が、 「何でも? そうよね、私もジョンハに会えるなら……猫になって飼ってもらいたいかも」 と小さくつぶやいた。 足元を通り過ぎた猫が店のような構えの家の横、更に細い路地へ進んでいく。路地からは料理中に鍋が火にかかっているんだろう、もくもくと湯気がただよってくる。 「あー、それ、思ったことある。頬ずりなんてされたら昇天するわ、ねえ」 「そうねえ、かわいがってもらえそうだもんね」 ミキに秋奈もうんうんとうなずいた。 みんな犬や猫を飼っていた記事をよく目にしたものだ。そのたび、飼い猫になりたい! なんて言っていたものだ。 「これ、店? やってないのかなあ」 「漢方薬局みたいね。でも電気ついてないし、やってないんじゃない?」 と秋奈は優花と薄暗い店を遠巻きに見ているとミキが手招きをした。 「ねえ、ねえ、あっち大きい通りみたいよ」 「あ、うん。行こう」 踵を返した優花に手を引っ張られた。 「う、うん」 薄暗い店の中には小さい引き出しがたくさんある薬箪笥が見えた。その前に人影が見えたような気がしたんだけど。 秋奈は2人に引っ張られるように暗い路地から明るい通りへと出た。 通りに出た瞬間、何もかも世界が違っていた。 建物はいつもより10倍以上も高く、でかく。 「え?」 「?」 「……何か変よ」 人の足が近づいてきて、あわてて飛び退った。 どでかい靴がヒールが頭上を越えていく。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加