王道転校生が来る

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4 「まあまあ、名前なんか親が勝手に付けるもんだ。あまり言ってやるなよ」  ホス先と呼ばれている人、多分このクラスの担任の先生が、転校生くんの頭にポンと手を置く。 「ホス先も樹茶(きてぃ)って名前だもんな・・・・・・。キラキラしてないだけ瑠夏の方がマシか」 「おう、ヤるか? 俺の名前を呼ぶんじゃねェ」 「いてっ・・・!」  ホスト先生が投げたチョークが、(くだん)の生徒の額に当たる。  そして、跳ね返ったチョークは、斜め後ろ横に座る俺の方へと向きを変えた。 「軌道がおかしい・・・・・・」  頭に当たったチョークを拾って、先生に返す。 「拾ってくれてありがとな」 「いえいえ。ホーミング性能が凄かったです」  ホスト先生の場所まで戻っていたら、三コンボだったんだけどな・・・。 「ところでお前、皐月か・・・?」 「はい。イエティ歴二年目の皐月です」 「少し見ないうちに大分頭がおかしくなったみたいだな。まあ、久しぶりに顔が見れて何よりだ」  目を細めたホスト先生が、俺の頭に触れる。  久しぶり・・・?  あまりピント来なかったが、俺の一年の頃の担任だと言われ、一度だけ話したことを思い出した。 「髪の毛染めたんですか?」 「いや、あの時は新入生の担当で時間が無かったからな。色が抜けて薄くなってただけだ」 「へぇ・・・俺も染めてみようかな」  中学生の頃に、ピアスと髪染めは高校生から!と、母さんに釘を刺された。  興味無いけど、オシャレは大事だよな。 「お前は落ち着いた色の方が似合うと思うぞ。皐月は清潔感のある正統派イケメンって感じだろ?」 「はい。染める機会があれば参考にしますね」  先生に会釈して、自分の席に戻る。 「そんじゃ俺は職員室に、っと・・・その前に、瑠夏の席を教えてなかったな」  ホスト先生が教室を見渡し、首を傾げる。  俺とバッチリ目が合うと、転校生くんの正面に立って、両肩に手を置いた。 「すまん。お前の席ねェわ」 「なんでだよ!! 空いてる席があるだろ!!」 「あれは仕事で退席している奴らの席だ。リアルにおめーの席ねぇから状態を見るのは初めてだな」  ガシガシと頭をかいたホスト先生が、用事を思い出したと教室を出ていく。   「俺の席が無いなんておかしいだろ!? そこのお前、邪魔だから退けよ!」 「いたいッ・・・! やめてよ・・・っ・・・!!」  転校生くんが、先頭に座る生徒に掴みかかる。 「そういえば俺って、風紀副委員長なんだよなぁ」  海斗兄さん曰く、俺の副委員長という肩書きはただの名義上の役職、つまり名誉職らしい。  喧嘩の仲裁とか、勝手にやっても良いのかな? 「俺に指図するなんて生意気だぞ!!」  拳を振り上げる転校生くん。  わざと大きな音を立てて、席を立つ。 「まあまあ。落ち着きなよ」 「ッ・・・!!」  目を見開いて固まっている隙に、転校生くんの背後に回って腕を掴む。 「俺の隣の席が空いてるから、戻ってくるまで借りたらどう?」 「ぅ・・・っ・・・お前は誰だ・・・!?」 「俺は五十嵐皐月。てか、瑠夏って呼んで良い?」 「皐月・・・ああっ!! 良いぞ!!」  海斗兄さんが言っていた通り、転校生くんは本当に声が大きい。 「俺の教科書は何処だ!?」 「ん? 持ってきてないの?」 「ああ!! 昨日急にここに行けって言われたんだ! パパもママも自分勝手だよな!」  共感を求められ、適当に頷く。  転校生くんは、問題を起こしては転校を繰り返して、遂に全国ブラックリスト出禁になったそうだ。  ここしか、行く宛てが無かったというわけ。 「瑠夏って実は物凄い不良だったりする?」 「な、何言ってるんだ!? 俺は族なんかしてないぞ!!」 「今って不良=族が主流なの? 俺はヤンキーとか想像してたんだけど」 「ああぁぁぁああああ・・・!!」  口元を抑えて、大声で叫ぶ転校生くん。  そんな『しまった!』みたいな顔されても、カマかけたつもりはなかったんだよ・・・。 「俺は気にしないから安心してよ。族でも厨二病でも全然おっけー」 「二人だけの秘密にしてくれよな!! あと俺は中二じゃなくて高二だぞ!!」 「知ってる。今日のところは俺の教科書使って」 「皐月は良い奴だな!!」  差し出した教科書を、奪い取るように勢いよく持っていかれる。  力つよ・・・。フィジカルお化けだ。
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