プロローグ

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プロローグ

   僕のつがいは僕を愛していない。  ベッドの上で僕を穿(うが)つつがいは、顔を見せてくれることも、見てくれることも絶対にない。  だから僕も愛してると言えなくて、ただ「欲しい」と何度も繰り返す。 「あっ……理人(りひと)、欲しぃっ、理人っ、欲しい……!」 「天音(あまね)、わかってる、わかってるから」  "わかってる"  あのときも、理人はそう言っていた。  十五歳だった僕たちがつがいになった日。  駅のトイレの個室。  わけもわからないまま繋がって、どろどろに濡れて、激しく突かれて。 「あぁっ……理人!」  好き。好きだよ。理人、愛してる。  ────理人がたとえ、僕を愛していなくても。
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