夫の運命のつがい

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 本当に唐突な申し出に、理解が追いつかない。  僕はただただ茫然と「夫の運命のつがい」に視線を留めている。 「理人さんにも今日言います。私とのこと、まだあなたに伝えていないだろうと思っていたんですけど、あなたが動いているってことは、理人さんが話してくれたんでしょう? やっぱり理人さんは私とのことを考えてくれていたんですね! だから今日会ったら伝えます。つがい解消や離婚に関わる費用や手続きを、私も手伝うって。一刻も早く理人さんとつがいになりたいんです!」  絶望という名の崖っぷちに立っている僕とは真逆に、彼は天に昇っているかのような幸せな笑みを満面に浮かべた。  まるでなにかの演劇でも見ているようだ。  こっち側とあっち側。  脇役と主役。  違う……僕は観客にもなれない蚊帳の外の人間だ。  正しいつがいの彼がいるところは、別世界のように感じた。  理人と彼はもう、別世界で別の人生に向けて歩き出しているのか……。 「夜、理人さんと会うので、あなたと話したと伝えますね。そうだ、大事なことだから今度時間を合わせて席を設け、三人で話しましょう。決してあなたを不利にはしません。私もできる限りのことはさせていただきます!」  熱く、湿った手で両手を握られる。  嫌なのに、その手は枷のように僕の手をしっかりと握り、僕は自分の意思でそれを振り払えない。 「でもよかったです。あなたがつがい解消を考えてくださっていて。やっぱり事故つがいなんて、不幸でしかないですものね。実費なら薬は早く手に入るって保健所で聞きました。だから安心してくださいね!」  とうとう感極まったのだろう。彼は大きな瞳から、次々に大粒の涙を流した。    そして僕は、またなにも言えなくなる。心の中は、二人の抱擁を見たときのように空虚になった。  頭の中では「事故つがいは不幸」「事故つがいは不幸」という言葉がぐるぐる回っている。  その後、どうやって彼と別れたのかは覚えていないけれど、店へ帰る道中で、僕はずっと謝り続けていた。 「ごめんね、理人」 「ごめんね、理人」 「不幸にしてごめん、理人……」
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