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まったく。
あんな言い方して、じゃあ、結婚しますって人がいると思っているのかな。
……まあ、北京ダック、美味しかったけど、と思いながら、
「ただいまー」
と晴乃が家に帰ると、玄関ホールの大きな階段を下りてきながら、父親が言った。
「ちょうどよかった、晴乃。
お前、結婚しないか」
どんなちょうど良さですか、お父様……。
「折り合いの悪い、義理の母と妹と暮らすの嫌だろう?」
自分で言いますか、それ。
「ずいぶん前に、つれあいをなくされた方なんだが。
老後は誰かとともに過ごしたいとおっしゃっててな。
そういえば、うちにひとり、定職につかないで、ぶらぶらしている娘がいますと言ったんだが」
「そんなのもらいたい人、いる?」
「若い娘ならなんでもいいと言ってたぞ」
「……そんな人は嫌です」
「そうよ、おねえさま。
早く結婚して出ていってくださる?」
短すぎるくらい短いショートパンツからすらりとした美脚を覗かせた妹が父と同じ階段から下りてきた。
雑誌のモデルをやっているだけのことはあり、歩いてくるだけで、サマになっている。
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