15日。

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15日。

そして、来たる15日。 「…は?」 僕は目の前の光景に、自分の眼を疑った。 笹山が笹川の上に座る、という構図自体はそのままなのだが、今日はいつもと違い2人が椅子に座っているのだ。 いつもは笹川が椅子役をしているのに…! しかもなんというか…空気が甘ったるい。 「やっと今日が来たなー♡」 「そうだね。」 「今日はフォーティーワンが安いみたいだし帰りよって行くか」 「良いねそれ!僕は…チョコミントにしよっかな」 「いつもそれじゃん。俺はー、んー、その時の気分」 「一緒にチョコミント食べようよ」 「馬鹿、そしたらシェアできないだろ」 「あー確かに。もったいない」 そして、2人はハグしたままこんな会話を繰り広げていたのだ。 笹川が笹山の腹にグリグリと頭を押し付け、それを笹山が愛おしそうに撫でているのだ。 クラスメートが「な?」と、声をかけてきた。 「だから言ったろ」 「あれは…なんなんだ?」 「月2回のイチャイチャデーだな」 「もはやうちのクラスのイベントだよね」 「うんうん、15日と30日は決まってイチャコラする日なんだって」 「本当に、あいつら付き合ってんのか…」 僕が絶句してると、笹川がこちらを向いた。 「あのね、勝手に人のこと決めつけないでね。僕はドМで、彼はSなんだ。だから、僕らはいつも学校でも家でもそういうプレイをしてるの」 「…はぁ…」 いまいち飲み込めない、が、とにかくいじめでないことはわかった。 「俺はドがつくSじゃねえからさ、こういう日が欲しいんだよなー♡」 「いつもも愛情感じるけど、この日があるからより燃えるよね」 「…ごめん」 自然と、この3文字が口から飛び出した。 「あはっ。わかってくれてよかったよ。あの日こいつ嫌なことあってさ、ただでさえ機嫌悪かったんだよな」 「もう。あの日は我慢したんだから言わなくても…」 「はいはい。頑張りました!でもほんとに良かったよ。お前、こいつが本気で怒ってたら今ここにいないぜ?」 「え?」 「笹川君、空手黒帯だから」 いつの間にか後ろにいた柳さんが教えてくれた。 「え…」 「だから言ったのに」 「2人は関係を公表してるからさ、先生も学園生活に支障をきたさない範囲ならって容認してるんだよ」 「それを先に言って欲しかった…」 「言ったところで信じられないでしょ?」 うぐ…確かに。 次の日、また2人はいつもの感じに戻っていたが、よく観察してみると、笹山は笹川の限界を見極めながら、笹川は苦しそうながらも幸せな表情をしていることに気がついた。 節穴なのは僕の方だったか。 ー---------------------------------- そして現在。 「おめでとう」 タキシード姿の2人はまさに円満具足、といったところか。 幸せオーラが眩しい。 「おう」 「ありがとう〜!」 この2人はとうとう結婚したのだ。 結婚自体はアメリカで、式は日本で挙げることにしたらしい。 かつてのクラスメートが招待されたので、同窓会の気分だ。 笹川がタキシードの下で縛られていることは、笹山しか知らない、2人だけの秘密(愛し方)ーーー
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