転校初日

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転校初日

僕の転校先では、いじめが常態化していた。 「おい、少し下がってんぞ」 「はい、すいません…」 「もっと腹に力入れろってんだよっ」 「うぐっ…」 転校初日の昼休み、明らかなるカースト上位の笹山という生徒が、ひとりの生徒をいじめていた。彼の名前は笹川。2人の名前が似ているのは偶然だろうか、必然だろうか…。 隣の席になった柳さんに聞いてみた。 「ねぇ、あれって…」 「あぁ、あの座ってるやつ?」 「あれ、止めなくていいの?笹川くん、辛そうだけど。」 すると、彼はとても気まずそうな顔をした。 僕はこの表情に何回も遭遇したことがある。どんな学校にもいじめがあって、コレは、傍観者のそれだ。またか、というのが正直な感想だった。 でも、見て見ぬふりはしてはいけない。だって、その結果、加害者も被害者もクラスを巻き込んで壊れてしまうから。 僕はどうせ数ヶ月したらまた別の学校に行くことになるだろうし、せめて瓦解を防ぎたい。 2人に近づこうとすると、柳さんに腕を掴まれた。 「なにするつもり」 「止めるんだよ、あれは間違ってる」 「あの2人には関わらない方が良い」 傍観者は安全圏から見ているだけだからそんな風に物事を考えられる。優しさって残酷だ。 柳さんの手を振り払ってつかつかと2人に近づいた。
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