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「おっ。シゲル、お姉さんから『荷物届いた』って連絡きたで」
「ほんま?」
ベッドから身を起こすと、晴海が画面を見せてくれる。「これから成分調べてみるから、続報は待っててね。」とのことやった。ありがたいなあ。……ほっとしたら、尚更気にかかることがあって。
「お礼うっとこー」ってスマホいらっとる背中に、おでこをくっつけた。
「晴海ー」
「おう、どした?」
「おれ、なんか出来ることないかなあ」
部屋返ってきてからも、怒っとる大橋と、落ち込んでる桃園。二人を心配しとる山田の顔が、頭から離れへんねん。
晴海はスマホおいて、おれと顔を合わせた。
「おれな、楽しかったらええかなあって。ほんで、喫茶店でもええやて思っててん。……大橋らの気持ち、なんも考えてへんかったなあ、て……」
かあーって耳が熱くなる。
おれ、自分がいっぱい参加してたからって、軽く考えてたんかもしれへん。リーダーやって、みんなを率いてくれてた三人のショックは計り知れへんよな。
しおしおと項垂れとったら、肩をポフンと撫でられた。
「それを言うたら、俺かて同罪やろ。決まったからには楽しまな損やって、秒で切り替えた男やで?」
「あっ、ごめん! そんなつもりやなくてっ」
慌てて首を振ったら、晴海は苦笑する。
「わかっとる。ただな、シゲルだけの気持ちやないってことを、言いたいわけ。俺も、竹っちも。上杉と鈴木も、同じこと思ってるから。一人で抱えんでええ」
「晴海……」
優しい声で言われて、目が潤む。
「晴海、おれな。大橋と桃園と、山田ともっぺん話しあいたい。何ができるか、わからへんけど……」
「このまま、ほっときたくないもんな。みんなで色々、考えてみよか!」
「うん!」
晴海は二っと笑って、握りこぶしを突き出した。おれも笑って、晴海にぎゅっと抱き着いた。
「ありがとう、晴海。大好きや!」
「おう、そうか。ははは」
晴海に話してよかった! いっつもな、気持ちがスーッと楽になって、「もう大丈夫や」って思えるねん。
背中をバンバン叩いて、身体を離す。
「よっしゃ。じゃあ、ちょっとスーパー行って来るわな」
鞄から財布を取り出して、スマホと一緒にポケットにねじ込んだ。晴海は目を丸くする。
「え。今からか?」
「ちょっと、欲しいもんあるねん。パッと行って帰ってくるから」
「せやったら、俺も――」
「あかーん! お弁当の材料やから、ネタバレ厳禁。なんやったら、お風呂入っててええよ。じゃっ」
ついてこようとする晴海を振り切り、おれはスーパーへ向かった。
寮に併設されてるスーパーは、二十四時間営業してるねん。お米も、たこ焼きの粉もお安く売ってる、学生の味方なんやで。
おれはカートを押しながら、スマホのメモの通りに買い物をする。
昨日はオムライスして、今日はおにぎりやったから。
ついに明日こそ、とりの唐揚げにチャレンジすんねん。油も買ったし、とりもムネとかモモとか、ようわからんかったけど買った。ブロッコリーも買った。あとは、まぶしたら美味しくなる粉だけやねんけど……
「唐揚げ粉。唐揚げ粉……たこ焼きの粉のとこでええんやろか?」
ごろごろカート押しながら歩いとったら。前方に、食材の山盛り入ったカートを発見する。
辺りをキョロキョロ見回してみるも、持ち主っぽい人はおらへん。
「お会計の前っぽいし、忘れ物ってことはないと思うけど……生もの入っとるし、ええんやろか?」
何となく放っとけず、うろうろしとったら「あー!」と黄色い叫び声が響いた。
嫌な予感に、ギクッ! と背中が引きつる。
「――それ、俺のカートですっ!」
振り返ると、やっぱり愛野くんやった。どどど……って駆け寄ってきて、おれとカートとの間に体を割り込ませる。それから、やっとおれに気づいたみたいで、キッと睨んできた。
「今井じゃん。人の荷物、じろじろ見るなよなっ?」
「えっ、ごめん」
反射的に謝ってから、「いや、そんな怒らんで良くない?」とムッとした。
「なんもしてへんよ! ただ、こんなとこに置いてあったから、何かと思って」
「な……! やっぱ、何かするつもりだったのか?」
「ちょちょちょい! なんでそうなんの!?」
おれ、なんもしてへんって言うたよな!? 話の飛躍が半端ないんやけど。
怖くなって、ずざざと身を引いた。――その拍子に、おれの肘が愛野くんのカートにコツンと接触した。カートは、積まれとったダン箱のほうに滑っていく。
「あっ!」
しもた! 慌てて手を伸ばして、カートを捕まえた。――ふう、危ない。息を吐いた瞬間、ドンッとつき飛ばされる。
「ぎゃっ!」
どてっ、と尻もちをつく。
見上げた愛野くんは、眉をつり上げて怒鳴った。
「何すんだよっ?! 食材が入ってるんだぞ! 俺だけじゃなくて、勇士とレンも食べるのに!」
「ご、ごめ……」
「さいってーだな!」
ふん! と息を吐いて、愛野くんはカートをコロコロ押して行ってしもた。
「ええ~……」
おれは、色んな意味で泣きたい気分で、その場にへたり込んだ。
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