第1楽章

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第1楽章

目の前に大きな門があった。 漆黒に輝く洋風のその門は そこから伸びている 古めかしいコンクリートの塀とは 対照的に真新しかった。 そして無機質なコンクリートの塀は 来る者を拒絶するかのように 外界との境界線をはっきりと引いていた。 しかし周囲に他の建物は見当たらない。 それならば。 これほど強固な境界線を 引く意味がないようにも思えた。 静かだった。 なんて寂しい処だろう。 それが第一印象だった。 鳶が「ピーヒョロロ」と啼いていた。 朝臣市のこんな山奥に ペンションを建てるなんて オーナーの須藤晴明という人は よほど変わった人物に違いない。 僕は恐る恐る取手に手をかけた。 その荘厳な門は するりといとも簡単に内側に開いた。 体を中に入れてから 振り返って門を閉めた。 途端に門の向こうが遠い彼岸に思えて 僕はしばらくその場で立ち尽くしていた。
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