帰りを待つひと

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帰りを待つひと

「ただいま」  玄関を開けてそう言って、頭を掻く。そういえば、同居していた友人は結婚してこのシェアハウスを出て行ったのだっけ。  友人の結婚式に出てもう何ヶ月も経つのにいまだにくせが抜けない。いい加減、帰りを待ってくれる人がいない生活に慣れないといけないのに。  まともに自炊もしなくなって、最近の食事はコンビニで買ったパンばかりだ。鞄の中からサンドイッチを取りだして袋を開ける。  突然、スマートフォンが鳴った。高校時代の後輩からのメッセージだ。  そのメッセージには、訳あって今住んでいる家を出たいので、こちらの部屋に空きが無いかということが書かれていた。  すこしの期待を抱きながらメッセージを返す。 「いつでもおいで」
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