4人が本棚に入れています
本棚に追加
最終話
五感はガムテープで。四肢と、首もお腹は鉄の金具と、鎖で固定されたまま。
だけど、返事をしなかったら、頭を殴られ、食事を抜かれる。
そんな、不可能なことを言ってくる彼を私は、怒らない。怒りもわかない。悪態も、悪口も、何も思いつかない。
健斗がいないと、生きれない。
生きるのに、必要なことは、生活の最低限の、水と食事は口移しで彼は食べさせて、飲ませてくれる。それに、最近は慣れて、5回に1回しか吐かなくなった。
臭くならないため、清潔でいるために、服を脱がさせて、新しい服に変えてくれる。最近肌着は着せてくれなくなった。シャツ1枚だけだ。下の服は糞尿が付くといけないからと着させてくれない。
排泄は最初は、バケツを下に置かれてたけど、それじゃあ糞はできないことに気づいたのか、太ももに鉄の鎖を巻いて、それで肛門下に、ポリ袋を付けたバケツをつけられた。糞は、私ひとりじゃできなくなった。健斗におなかを力強く押してもらって、ようやくできる。だから健斗がいるときは、見守っていてくれるようになった。自分の意志じゃない。尿も漏れそうになったら漏らすだけだ。
呼吸用に鼻は緩くガムテープでふさがれているから、においはすごくわかる。
臭いけど、我慢するしかない。
暇なときは、耳のガムテープだけ外して、読み聞かせをしてくれる。
お風呂は鎖をドアにつながれて、健斗と一緒だけど、きれいにするにはそれしかない。健斗も嫌がらずに、頭も、体も洗ってくれる。鎖もたまに、きれいにしてくれる。
風邪をひいたら、床に固定されて、鎖の数が多くなって、尿まみれになって、食事はない。健斗も口移しや掃除は風邪がうつる。嘔吐したいときはガムテープに向かって吐いて、口の中に逆流する。もちろん、健斗は来てくれない。移ると大変だから。
ガムテープだって、1日1回交換してくれる。ガムテープを変える瞬間は、頭を殴られ気絶させられた後だ。頭に包帯が巻いてあるらしい。
動けないように、足の刺し傷が治ったら、また刺されるけど、刺すときは彼が抱きしめて、口をふさいでくれる。
夜、寂しかったら、鎖の位置をベットの足の部分に固定して、一緒に寝てくれる。
……私は、健斗がいないと生きられない。
…………生活できない。これは監禁というのだろうか。これは、なんというのか。
健斗は、私を甘やかす。
私は精神がおかしくなったのだろうか、
最近、四肢と五感、首も、お腹も、固定されたからだろうか。
生活に必要な部位が、私から、消えたからだろうか、
健斗に、所持権を奪われたからだろうか、
……私はもう、人間として、機能してないのではないのか……
だって、鎖で固定され、掃除、着替え、食事、お風呂。糞尿は糞は手伝ってもらわないと無理だし、尿も漏らしてるだけだから、掃除してくれる人が必要。
これは、人間が生きるためにすること。それを、すべてできなくなったら、私は何なの?
健斗がいなくなったら、もう、何も人間として活動してこなかった私がどうなるかは、大体わかる。
私は、健斗がいないと、生きていけない。
私は、私を監禁して、身の回りのことをすべてやってくれる健斗に依存している。元、ストーカーの健斗に。
だから私は
耳のガムテープを外してくれる、
「おはよう」
「いってきます」
「一緒に寝ようか」
そして何より
「ただいま。ハル」
と、健斗が言う瞬間を、心待ちにしている。
最初のコメントを投稿しよう!