お母さまからの電話

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お母さまからの電話

 その彼が二年の海外赴任を終えてきょう成田に夜の便で帰国すると彼のお母さまから電話があった。 「まあ。何も聞いてないの?」 「あ、はい」 「突然帰って驚かせるつもりなのかしらね?」 お母さまは電話の向こうで笑っていた。 「じゃあ、私が迎えに行って逆にビックリして貰おうかしら?」 「そうね。それが良いわ」 お母さまは楽しそうに笑いながら 「今夜は家に帰らなくても良いからって伝えて」 「お母さま……」 「二年は長かったものね。今夜は二人だけで過ごしなさい」 「ありがとうございます」 「お式は来月にでも挙げましょうね。楽しみだわ」 お母さまの声は弾んで嬉しさを隠せない様子。 「じゃあ、成田まで行って来ます」 「花蓮さん。気を付けてね」 「はい。大丈夫です」  いつもより念入りにメイクもして彼からのプレゼントのオークベージュのミディ丈のワンピースを着て成田へと車を走らせる。  どんな顔をしてくれるのだろうか? 今から楽しみでワクワクしている。  二年ぶり……。 私は二十六歳になった。 愁人(しゅうと)は二十八歳。  この二年間、毎日のように夢見てきた愁人との結婚生活。  結婚したら大人の素敵なパートナーになりたいと思ってきた。 「二年前より綺麗になったな」 愁人にそう言って欲しくて努力もしてきた。  その願いがもうすぐ叶うと思うと嬉しさに顔がほころぶ。  早く会いたい。  車を駐車場に停めて到着ゲートへと急ぐ。  パンプスじゃなくてスニーカーで来れば良かったかなぁなんて……。    帰国して最初に私を見て貰いたくて良く見える場所に立ち待っていた。  お母さまから聞いていた便が無事に到着した。  大好きな愁人に会えると思うと胸がドキドキしてくる。
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