カレンと花蓮

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カレンと花蓮

 カレンが私に会いに来た。 何しに来たのか知らないけれど……。  会社の近くのカフェでテーブルを挟んで向かい合う。  私にとって異様な光景。  青い目のカレン。やっぱりきれいだと思う。  注文したコーヒーを見つめる。 カレンはココアを注文した。  お腹の赤ちゃんの為には良いのだろう。 「ごめんなさいね。愁人をあなたから奪って」  日本語が流暢過ぎて驚いた。 「わざわざそれを言いに来たの?」 「私ね。日本が大好きで、どうしても日本に住みたかったの」 「そう」 「その為に愁人が必要だったの」 「それで?」 「私を恨まないでね。私を選んだのは愁人なの。あなたは捨てられた」 「だから?」 「もう入籍も済んで私は日本人になったから」 「…………」 「あなたには本当の事を教えてあげようと思って」 「本当の事?」 「この子。愁人の子じゃないのよ」 「今なんて?」 「愁人に会う前に付き合ってた日本人留学生の子なの」 そう言ってカレンは笑い出した。 「どういうつもり?」 「花蓮さんに勝利宣言かな?」 「本当に愁人の子じゃないの?」 「だって愁人に会う前から妊娠してたもの」 「愁人を騙して入籍したの?」 「騙してないわ。愁人が勝手に自分の子だと思っただけよ」 「詐欺師なの? 日本国籍を得る為に愁人を利用したの?」 「そうね。優しい愁人は利用価値があると思っただけよ」 「悪いな。カレン。お前はまだ日本国籍は取得してないよ」 後ろの席から立ち上がって愁人が言った。 「愁人……。どういう事?」 「婚姻届は提出してないんだよ」 「どうして?」 「産婦人科へ一緒に行ったよな? 胎児のDNA鑑定をしてもらった」 「何てことしてくれるのよ」 カレンは激昂して言った。 「僕の子である確率は5%以下だそうだ」 「裏切り者」 カレンは泣き叫ぶ。 「それはどっちだろうね」    こんな茶番劇に付き合っていられない。 「もう帰っても良いわよね」 「花蓮……僕が悪かった……」 「韮崎さん。これで本当にさよなら。お幸せ……にはなれないわよね。じゃあ」 私はカフェを後にした。
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