幸せ

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幸せ

 カフェの外には瑛太さんが。 「終わった?」 「はい。全て終わりました」 「じゃあ、次は僕と始めようか」 私を見つめる瞳は春の陽射しのように温かい。 「少し時間をください」 「いくらでも待つよ」 瑛太さんは微笑んで、二人手を繋いで会社に帰った。 「えっ。嘘……」 「そんな……」 女子たちの悲鳴が……。  独身男性一番人気の松坂課長は注目の的だった。  二人の仲は全女子社員に知られる事になる。  尊敬する上司であり、誠実に見守り支えてくれた瑛太さんと向き合おう。  不幸の後には幸せが待っていると言う。  それから瑛太さんと少しずつ、お付き合いが始まった。  退社後の食事や、お休みにはドライブにも出掛けるように。  瑛太さんは決して無理な事は言わない。  彼の優しさに包まれて、忘れていた幸せな気持ちを取り戻していた。      付き合うようになり半年。    初めて瑛太さんのお宅にお邪魔した。  かなり広い敷地に重厚な日本家屋。大きな木製の門構え。  表札には、相良(さがら)の文字が。 「えっ? 松坂じゃあ」 「松坂は母方の名字なんだ」 「もしかして……社長のお宅?」  瑛太さんは笑顔で頷いた。    社名は、株式会社さがら。 紳士靴、婦人靴の老舗ブランド。  私の作った靴は私を素敵な所に連れて行ってくれた。  愛する相良瑛太(さがらえいた)さんのとなりに。  彼のパートナーとして。  そして一年後。 私たちは家族、友人、社員の皆さんにも祝福されて、ウェディングベルを鳴らした。     了
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