193人が本棚に入れています
本棚に追加
02.皇家と烏族
玄武皇国の王、鲁雲嵐には、二人の妻がいる。正妃、美麗と、側妃、魅音である。
雲嵐は、冷酷なまでに平等を貫く男で、正妃と側妃の区別はつけなかった。お渡りももちろん平等、生まれた子どもも二人ずつ。しかも、偶然だが男女一人ずつ設けている。
第一皇子の浩然は正妃の子、第一皇女の明霞と第二皇子の仔空は側妃の子で、末娘の第二皇女の麗花は正妃の子だ。
良くも悪くも、浩然は見た目も性格も父親にそっくりで、明霞や仔空に対する扱いは、麗花のそれと変わらない。腹違いの弟妹を区別したりしないのだ。だからといって、別段親しく接するわけでもないのだが。
しかし、美麗と麗花は違った。
美麗は、常に正妃であることを驕り、側妃を卑しい存在だと貶めていた。当然、その子どもである明霞と仔空も冷遇する。
魅音がいた時は彼女が盾となっていたのだが、明霞が十五、仔空が十四の時に儚くなって以降は、エスカレートするばかりである。
ただ、仔空の方はまだ恵まれていた。
頭が良く、物覚えもいいことから、十の頃から父や兄の執務の手伝いをしており、それ故、美麗や麗花とあまり関わらずに済んだのだ。
だが、明霞は違った。
ことあるごとに麗花と比べられ、「地味」「暗い」「鬱陶しい」、髪の色がくすんだ白であることから「まるで老婆のよう」などと貶められ、皇女だというのに美麗や麗花に使用人のようにこき使われた。
無茶な仕事を命じられ、できなければ鞭で打たれた。与えられた美しい衣服は全て没収され、麗花が飽きたり汚して使い物にならなくなったものを着るしかなかった。公式行事もいつしか参加させてもらえなくなり、裏方で働かされるようになった。
次第に、明霞は皇女として忘れられた存在となり、皇女といえば麗花だけを指すようになった。
にもかかわらず、雲嵐と浩然は見て見ぬ振りだ。女の世界には決して関わらぬとばかりに。
虐げられる明霞を心配し、時に庇うのは、仔空だけだった。
皇宮の居住区画では、女の力の方が強い。そんな中で、明霞が何とかやってこられたのは、仔空があれこれ取りなしてくれたからである。
そんなある日、珍しく雲嵐が居住区画へやって来た。
すでに跡継ぎもいてお渡りはなくなっており、王がここへ来るのは本当に珍しいことだった。
朝早くから、美麗は美しく着飾ることに執念を燃やしており、麗花もあれこれねだろうと手ぐすね引いて待ち構えていた。
そこで、烏族との婚姻について聞かされたのだ。
「麗花、烏族の次期長との婚姻を命じる」
このたった一言である。
最初のコメントを投稿しよう!