02.皇家と烏族

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02.皇家と烏族

 玄武皇国の王、(ルー)雲嵐(ウンラン)には、二人の妻がいる。正妃、美麗(メイリン)と、側妃、魅音(ミオン)である。  雲嵐(ウンラン)は、冷酷なまでに平等を貫く男で、正妃と側妃の区別はつけなかった。お渡りももちろん平等、生まれた子どもも二人ずつ。しかも、偶然だが男女一人ずつ設けている。  第一皇子の浩然(ハオレン)は正妃の子、第一皇女の明霞(ミンシャ)と第二皇子の仔空(シア)は側妃の子で、末娘の第二皇女の麗花(リーファ)は正妃の子だ。  良くも悪くも、浩然(ハオレン)は見た目も性格も父親にそっくりで、明霞(ミンシャ)仔空(シア)に対する扱いは、麗花(リーファ)のそれと変わらない。腹違いの弟妹を区別したりしないのだ。だからといって、別段親しく接するわけでもないのだが。  しかし、美麗(メイリン)麗花(リーファ)は違った。  美麗(メイリン)は、常に正妃であることを驕り、側妃を卑しい存在だと貶めていた。当然、その子どもである明霞(ミンシャ)仔空(シア)も冷遇する。  魅音(ミオン)がいた時は彼女が盾となっていたのだが、明霞(ミンシャ)が十五、仔空(シア)が十四の時に儚くなって以降は、エスカレートするばかりである。  ただ、仔空(シア)の方はまだ恵まれていた。  頭が良く、物覚えもいいことから、十の頃から父や兄の執務の手伝いをしており、それ故、美麗(メイリン)麗花(リーファ)とあまり関わらずに済んだのだ。  だが、明霞(ミンシャ)は違った。  ことあるごとに麗花(リーファ)と比べられ、「地味」「暗い」「鬱陶しい」、髪の色がくすんだ白であることから「まるで老婆のよう」などと貶められ、皇女だというのに美麗(メイリン)麗花(リーファ)に使用人のようにこき使われた。  無茶な仕事を命じられ、できなければ鞭で打たれた。与えられた美しい衣服は全て没収され、麗花(リーファ)が飽きたり汚して使い物にならなくなったものを着るしかなかった。公式行事もいつしか参加させてもらえなくなり、裏方で働かされるようになった。  次第に、明霞(ミンシャ)は皇女として忘れられた存在となり、皇女といえば麗花(リーファ)だけを指すようになった。  にもかかわらず、雲嵐(ウンラン)浩然(ハオレン)は見て見ぬ振りだ。女の世界には決して関わらぬとばかりに。  虐げられる明霞(ミンシャ)を心配し、時に庇うのは、仔空(シア)だけだった。  皇宮の居住区画では、女の力の方が強い。そんな中で、明霞(ミンシャ)が何とかやってこられたのは、仔空(シア)があれこれ取りなしてくれたからである。  そんなある日、珍しく雲嵐(ウンラン)が居住区画へやって来た。  すでに跡継ぎもいてお渡りはなくなっており、王がここへ来るのは本当に珍しいことだった。  朝早くから、美麗(メイリン)は美しく着飾ることに執念を燃やしており、麗花(リーファ)もあれこれねだろうと手ぐすね引いて待ち構えていた。  そこで、烏族との婚姻について聞かされたのだ。 「麗花(リーファ)、烏族の次期長との婚姻を命じる」  このたった一言である。
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