千夜くん、病に倒れる

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千夜くん、病に倒れる

ある晴れた日の午後だった。 パティシエである俺…千夜保(せんやたもつ)は自分の作ったケーキを客達が食うのを眺めながら、幸せな未来を心に描いていた。 妻の香澄(かすみ)は、教師として高校で教鞭をとっている。 娘の雅(みやび)は、無事に浜崎透(はまさきとおる)と結婚し、今や小学生の男児…博史(ひろし)の一児の母親だ。 それからつい最近、マブダチの鈴木航(すずきわたる)が、パラサイトのワクチンを開発したとしてノーベル医学生理学賞を受賞した。 だが、鈴木はマスコミに引っ張りだこになりながらも、若葉(わかば)大学総合病院で引き続き医師として働いている。 もう1人のマブダチ、山村凌(やまむらりょう)も奥さんの茜(あかね)と2人、デケー料亭を営む毎日だ。 確かつい先日、鈴木の祝いを兼ねて、貸し切りで皆で山村亭に集まったんだったな…。 全員「乾杯!」 夜もまだ早い時間、博史以外は、ビールで。 まだ未成年の博史はオレンジジュースで乾杯した。 「すげーな!祖父さんの友達、ノーベル賞を受賞するなんてさ!俺の学校でも話題になってるぜ!」 博史は興奮した様子で、鈴木の方に身を乗り出した。 「こら、博史。お行儀良くしなさい」 雅が注意するのを、鈴木が苦笑しながら言う。
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