別れと最後の願い

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「だからー、ここは、中割り折りをこうするんだって!何回、同じ事、言わすんだよ、祖父さん!」 「たってなあ、折り紙なんざ小学生でやって以来だぜ。覚えてねーよ」 俺は見舞いに来た博史に鶴の折り方を教わってたが、何度やっても上手くいかねー。 枕元の博史は器用に鶴を折ると、棚の上に、俺にも見えるように乗せた。 我が孫ながら、綺麗な鶴を折るモンだな。 俺が内心、感心して鶴を見てると、何故か香澄だけが病室に戻ってきた。 「あれ?祖母さん、母さんは?」 「あ…雅…お母さんは、急用が出来たとかで先に帰ったわ」 香澄…何か様子がおかしいな。 だが、俺がその事を訊く前に、博史が驚いたような声を上げる。 「何だよ、母さん!オレに黙って帰るなんて!」 「お母さんも忙しいのよ。代わりに私と帰りましょう?送って行くわ。…貴方」 「応。検査の結果、どうだった?」 「それが…まだ不明な点もあるから、後日、治療方針を決めましょうって事になったわ。今日は、もう帰るけど、又、来るわね」 香澄の目が腫れているのが、引っ掛かったが、香澄は不満気な博史を連れて、とっとと病室から出て行っちまった。 何か…身体の具合が悪いな…。 誰も居なくなった病室で、上体を起こしていた俺はベッドに横になった。
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