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それから数ヶ月後。
俺はどんどん自分が弱っていくのを感じていた。
薬の量や種類は、鈴木の指示だろう。
どんどん増えていった。
俺は段々と上体を起こすのも辛くなって、日長1日中、ベッドに横になっている時間が増えた。
何故だ…?
俺は、そんなに悪いのか?
だが、鈴木に訊いても、「治療中に体調が悪くなる事は、よく有ります」とだけ言われた。
そんな中、博史が学校の帰りに見舞いに訪れた時だ。
あれから、みちると仲良くなったと嬉しそうに話してるのを見て、俺も香澄にビンタを喰らった甲斐があったと思った。
と、その矢先…。
「ハア…ハア…ハア…」
「貴方!今、鈴木くん、呼んだからね?!しっかりして!」
容体が急変した俺は香澄に手を握られ、苦痛に耐えていた。
俺…死ぬんだな…。
誰にも何も言われなかったが、俺は直感的にそう思った。
ふと、博史の折った鶴が目に入る。
俺は、その鶴を見て思った。
おい、鶴…あんたにも奇跡を起こす力があるなら、俺の最後の願いを叶えてみせろよ。
俺の最後の願い…それは、皆が皆、幸せになれるように、と。
心電図が異常な音を立てている。
香澄は両手で俺の手を握り締めながら、泣いていた。
香澄…泣くなよ…。
そう思っても、声に出す力と手を握り返してやる力は、もう俺には残っていなかった。
完
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