9人が本棚に入れています
本棚に追加
急に不安と恐怖が押し寄せてくる。
鈴木は真面目な顔をして、俺と香澄に言った。
「検査してみないと詳しいことはわかりませんが、深刻な病気が隠されている可能性が高いです」
鈴木は、そう言った後、聴診器を病衣の隙間から俺の胸に当てた。
「心音は正常です。しばらく入院して下さい。…香澄さん」
「…ええ。貴方、ちょっと席外すわね?鈴木くんのお話が終わったら、又、来るから」
香澄は鈴木と病室を出て行っちまった。
看護師が「大丈夫ですよ。鈴木医師の腕は良いですから」と言って、残りすくねー点滴の袋を取り替える。
鈴木の腕の良さは、十分わかっているが、芽生えた恐怖は払拭出来る事はなかった。
診察室で。
私は鈴木くんから、夫の状態を大まかに説明された。
「詳細については、まだ検査結果を見ないと断言出来ませんが、事態はかなり深刻だと思って下さい」
「鈴木くん…千夜くん…夫の容体は、そんなに悪いの…?」
「ヘモグロビンの値が基準値を大きく下回っています。精密検査で更に詳しく調べる必要があります」
鈴木くんの暗い声に、私は自分の胸が苦しく、締め付けられる気がした。
「こちらも主治医として、最善を尽くします。香澄さんも、千夜くんを支えてあげて下さい」
最初のコメントを投稿しよう!