千夜くん、病に倒れる

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少しして、香澄が病室に戻って来た。 「香澄。鈴木、何だって?」 「え、ええ。検査して様子を見ましょうって。貴方、私、一旦、家に帰るわね?要り用の物、見繕って持って来るから」 俺は気付かなかった。 俺に向かい、笑顔で応えた香澄が、背を向けた途端に、泣きそうに顔を歪めた事に。 翌日から早速、精密検査が始まった。 医学のことは、よく解らねーが、色々な機械に乗せられたり、通されたり、横にされたり、車椅子に座らされ、移動させられた。 別に歩きでも構わねー気はしたが、いきなり店でぶっ倒れた事を思うと、おそらく指示した鈴木の判断の方が正しいだろ。 検査を一通り終え、病室に戻ってくると、雅と博史が千羽鶴に見える、折り鶴の束を持って、待っていた。 「お父さん、検査、終わったの?」 「祖父さーん、千羽鶴、持って来てやったぜえ!」 「ああ。後は結果が出るまで2、3日掛かるらしい。それから、千羽鶴、サンキューな。よくこの短期間で折れたな」 雅は、博史から千羽鶴を受け取ると、ベッドからよく見える位置に吊るした。 俺は付き添いの看護師に手伝われ、ベッドに横にさせてもらう。 博史は…そうか、丁度、冬休み中だ。 「お母さんから、お父さんが倒れたって聞いて、ビックリしたわよ。それで、私と博史と茜さんの3人で急遽、折り始めたの」
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