ただいま、なんて言わない。

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「おかえり、日香凛(ひかり)」 わたしはいつものように父の言葉をスルーして 自室に向かう。 「今日の晩御飯、カレーにしたんだ。 人参がいつもより安かったからな」 「……」 「今食べる? それとも部屋に運ぶか?」 「後で自分で部屋に持ってく。 わたしのことに構わないで」 冷たく言い放ちドアを閉める。 わたしはドアノブを片手に唇を噛み締めた。 こんなに突き放してるのに どうしてお父さんはわたしに構うの。 イライラしながら 勉強机の上に鞄を置く。 机の上の写真立てに飾ってある にっこり笑うお母さんの写真。 お父さんはお母さんを裏切った。 でも、胸に残るモヤモヤとした気持ちは 眠りにつくまで消えてはくれなかった。
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