1 訪問者

4/5
前へ
/23ページ
次へ
「あんたの事は少し調べさせてもらったわ。白川未咲(しらかわみさき)瀬戸香(せとか)市内の私立高校に通う高校三年生。実家からは通えないから、親元を離れて一人で暮らしてる。父親は大学病院の脳神経外科医なんだって?」 「な…何が目的なんですか……」 「あんたの両親を誘拐した。生きて返して欲しいなら言う通りにしろ」 「は…?」  桜花は自分のスマホを取り出し、ある画像を私に見せた。  そこに写っていたのは、薄暗い部屋で椅子に拘束された両親だった。 「ひどい……!」  吐き気が込み上げ、私は両手で口元を覆った。 「ちょっと、こんなところで吐かないでよ」  桜花は楽しそうに続ける。 「今日からここが私の家になるんだから、汚さないで」 「……な、何言って───」 「今日から私はあんたに成り代わって生活する。同じ日に生まれた双子なのに、あんたばっかり贅沢三昧なんて狡いじゃない」 ───この子、狂ってる…!  桜花の手の中で、私のスマホが振動した。  おそらく、まー君からのメッセージだ。  桜花はスマホの画面を見つめ、わずかに眉を寄せた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加