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もう一度小さく呟いて立ち上がった時だ。突然、降夜が吠えた。
「伏せろ!」
視野の端──窓の向こうで何かがきらりと光ったと感じたのだ。
瞬間、窓ガラスが砕け、部屋を無数の弾丸が直撃する。
棒立ちの真霧を抱え、降夜が飛んだ。
テーブルを倒し、その影に身を縮ませる。ベルトに挟んだ銃を出したものの、どこに反撃していいか分からない。
向かいのビルからか? いや、もっと多方向からだ。絶え間ない銃撃に、腕の中の少女は完全に硬直している。
「大丈夫だ。しっかりしろ、真霧ちゃん。僕がいるから!」
そう怒鳴っても、聞こえているのかどうか。反応も示さない。
この街で──特にこんな商売をしていては──理不尽な暴力は日常だ。しかし今回のものは全く、完全に、一切、身に覚えがなかった。
数分間、弾丸に晒されてようやくその雨が止む。
今だ。この部屋から逃げ出そうと、降夜は真霧を小脇に抱えた。玄関まで一気に飛んだその目の前で、扉がバチバチと激しい音を立てる。
銃声だ。ドアに撃ち込まれているのだと悟った瞬間、蝶番が跳ね、ガタッと取っ手が落ちた。そして扉そのものがこちらに倒れてくる。
身を守る盾もない。真霧を抱え、咄嗟に銃を構えるしかない降夜の前に現れたのは、黄金の髪を靡かせた1人の女だった。
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