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「あの時は普通の宅配業者と思ったのよね、ライム」
「雨が降ってたし顔までは見てないわよね、レモン」
他に何か気付いたことある? との質問に、2人は声を揃えて「別に」と答えた。
ふざけた双子ね。何がライト姉妹よ。
女刑事が煙草の灰を床に落とした。Kの眦が吊り上がる。
「後の方はボクが紹介します。まずは『ネーベン・ガッセ』が誇るストリッパーの樹楽。28歳」
店長に大声で年齢を言われ、樹楽は一瞬顔を顰めた。
同時に全員の視線が彼女に集中する。正確には、シャツから半分はみ出ている豊かな胸に。
それを悟って樹楽はさり気なく胸を揺らしてみせた。
「な、何カップっスか?」
生唾を飲みながらレオが尋ねる。
「Fだよ」
ホゥ、と唸った脱色頭をガーネットの握り拳が見舞った。
「ボク以外の従業員はこのライト姉妹と樹楽さん、それからラッパーのカンナさんだけです」
カンナさんとの言葉とともに、全員の視線が床に落ちる。
いたたまれなさを感じたのか女刑事は白々しく店内を見回し、それからおもむろに店員の顔を眺めて最後に溜め息をついた。
どいつもこいつもマトモじゃなさそうね、という思考がありありと顔に出ている。
「時間が早かったからお客様はそれほどいらっしゃいませんでした。皆さん、常連さんばかりですよ」
客の方も、これもまた……。
ガーネットの溜め息が深くなる。どいつもこいつも見るからに胡散臭い。
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