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「さぁ、ゲームの始まりだ──。眼を送り付けて、犯人はそう言ってるつもりかしらね。遊んでるのよ」
ガーネットがさり気なくブラッドに背を向けた。
残された男が気の毒で見ていられないのか。
しかし、空気を読まない新米刑事が場の緊迫感を裂いた。
「先輩、こないだ酔っ払った時上手いこと言ってたじゃないっスか。この事件にはメッセージ性があるんだわって。眼を送って『見えない』って。指で『触れない』イテッ、何スか! 足の爪で『逃げられない』で、乳房で『明日はこの下の心臓だ』ってこと。そして5日目が『GAME OVER』だって。アテッ! 何すんスか」
何度か頭をぶん殴られ、レオはようやく黙った。
デリカシーがないにも程があるわ! そう言って、ガーネットはもう一度後輩の頭を拳で殴る。
「とにかく犯人は遊んでるとしか思えない。それともこの街を暗示してるつもりかしらね」
「何、どういう?」
独り言に近い小さな呟きをドクター咲良が聞き咎めた。
馴れ馴れしい奴ねと毒づきながらもやはり小声で返す。
「つまり、正義が見えない。生命に触れない。街から逃げられない。明日なんてない。死、あるのみ」
「へぇ……刑事さん、詩人だねぇ」
からかうような口調にガーネットが顔を赤らめる。
イヤだ、調子に乗って恥ずかしいことを言ってしまったわというように苦々しくピンクの目を睨み付ける。
握り締めていた拳を解いたのは、ブラッドに見据えられていると気付いたからだ。
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