その目(1月7日)

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「何でカンナが……?」 「それは……」  何故、よりによって彼女が狙われたのか?  今、男の頭は疑問が渦巻いているに違いない。  そんなこと、アタシにだって分かんないわよ。犯人に聞きなさいよ、とは言えないのだろう。 「ひ、被害者を選ぶのに法則があるのかというと、現段階で判断するのは難しいわ。ただ、2人共この店の従業員という事。若い女性という事」 「えっ、コワイよ」  樹楽(ジュラ)が声をあげる。双子と顔を見合わせた。 「次はあたしたちとか言わないでくださいよ」 「絶対に独りで出歩かないようにしなくちゃ」  女刑事は面倒臭そうに頷いた。  アンタたちをさらっても(やかま)しいだけで、犯人が迷惑するかもねと言いたいのをこらえているといった表情だ。 「ええ、まぁ気を付けてちょうだいよ。そもそも猟奇殺人ってのは殺人そのものを楽しむタイプと、それを世間に誇示して優越感に浸るタイプの2種類あるわ」  ──『(フュンフ)』は、もちろん後者ねと、彼女は続けた。だからこうやって何某(なにがし)かのものを送っては、こちらにコンタクトをとってくるのよ、と。 「犯人は間違いなく単独犯ね。そしてこの店の人間関係に詳しい。その人が居なくなったら血眼になって捜す者がいるという人間を選んで犯行を行うのよ。それを見て楽しむためにね」  一息に語ってから、女刑事はせわしなく煙草を吸う。  一同は互いに顔を見合わせた。
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