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10本の指(1月8日)
とにかく時間がない。
状況も把握出来ない中、とにかく被害者の生命……1日ごとに確実に削られていく被害者の命を優先して捜査にあたるわよ!
女刑事は勇ましく宣言した。
しかし返事は「ほぁい」という脱力した欠伸が一つ。
「レオ、アンタね」
脱色頭を殴ってから、ガーネットは大きな溜め息をついた。
正直、自分には捜査能力皆無の刑事というレッテルが貼られている。
酔っ払って暴れただの、容疑者を取り逃がしただの、署内では散々な悪評が立っていた。
無責任な噂に対しては腹も立つが、噂の半分に関しては否定のしようもないというのが現実である。
『5』捜査本部とは名ばかり。
実質この事件に関して動いているのは、彼女たち2人だけだった。
それでなくとも人手不足な警察で、今はテロや襲撃事件に人手を取られてしまい、殺人にまで人数が回らない。それが現状だ。
近々、マフィアの全面抗争も起こるといわれる中、応援要請などが聞き入れられる筈もなかった。
この街では猟奇殺人だって珍しいことではない。
やる気のない新人刑事と操作能力皆無の女刑事の2人では、さして動く事もかなわない。
実際、初日の捜査は『シリアルK』での聞き込みで暮れてしまった。
翌日、早めに出勤した彼女を待っていたのはカンナの指が発見されたという情報だったのだ。
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