その目(1月7日)

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「そうだ。K、これを」  ブラッドが横の椅子に置いていた紙袋を、思い出したようにカウンターに乗せる。  中には黒光りするサブマシンガンが無造作に入れられていた。 「ヘックラー・ウント・コッホ社、最新のMP7が、2挺入っている。すまないが、K、今日で最後だ」 「ええ、すみませんね」  ブラッドとK──外見は全く似ていないが、彼らは実の兄弟である。  今日で最後、という言葉は言った方にとっても、言われた方にとっても重いものだ。  数秒の沈黙が2人を覆う。()が口を開きかけては黙り込む事を何度か繰り返す間、兄はおとなしく恋人(カンナ)の映像を見ていた。 「夜、カンナのステージが終わったら、出発するよ」  不意にブラッドが顔をあげた。  Kが微かにたじろぐ素振りを見せる。 「特殊部隊の出勤(仕事)も、今日で最後だった。ドイツでも、チェコでもいいってカンナが。緑の豊かな田舎に住もうって言ってた」  弟は諦めたように小さく息をついた。口元が微笑を作る。 「そうですね。兄さんは早くここから出て行った方が良い。あまり人がいいと、この街では長生きできませんからね」  今夜は兄弟の別れの夜だった。  兄は恋人と共に街を出る。  弟はこの街で店を続ける。  お互いに、それが最良の選択だと分かっている。
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