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車というのは元々機械の集合体なので、爆発物を仕掛けても発見されにくいという一面がある。
降夜は複雑化したエンジンの中に小型爆弾を発見した。
一見、車のパーツのようにも見える。
だいたい街のチンピラが使用する爆弾はIEDと呼ばれる、武器の弾薬を利用した単純な造りの手製爆弾が主だ。
「面倒臭ぇな」
降夜は手袋の爪先を噛んだ。
「どうだ。出来るか?」
彼が1人で作業に入った途端、ゴルトが側に寄って来た。
マフィアである彼女は、一応警察関係者のガーネットとは顔を合わせないように離れていたようだ。
「わたし達がいくら仕掛けても、こうやって貴様に解体されては鼬ごっこになるな」
「あなたのとこで設置した爆弾ヤツですか、コイツ」
「いや、それは分からん。街のどこに仕掛けたかなど、いちいち報告なんてもらえないからな……」
ゴルトが笑うのを、降夜はどんよりした暗い面持ちで聞いていた。まさしく鼬ごっこ。
ここは彼女達が仕事を作ってくれるのを有難がるべきなのか。
「まぁ良い。お手並み拝見といこうではないか」
軽い口調のわりに、降夜の手元を見詰める彼女の目は真剣だ。
この現場から何かを吸収してやろうという意気込みが伝わってくる。
それが降夜には少々、意外に感じられた。
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