ミサ・ゴルト・クレーバー(1月10日・2)

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「何でその若さで女ボスなんですか」  ゴルトの肩がピクリと震えた。しまったと降夜は思わず身構える。しかしそれは女ボスという言葉に覚えた怒りというわけではなかったようだ。 「去年の抗争で父が死んだ。ファミリーを他人に渡すわけにはいかんだろう。だから1人娘のわたしが継いだ。誰にも文句は言わせない」 「手頃な親戚とか居なかったんですか。それによく古株の構成員が納得しましたね」 「ああ……」  ゴルトの唇に微かな笑みが浮かんだ。苦くもあり、誇らしくもある。複雑な微笑だ 「父が偉大だったからな。その血統は絶対だ。ボスとして相応しい限り、奴等はわたしを立てるだろう」  ──しかし一度失敗すれば即、首をすげ替えられる。  裏を返せばそういう事だ。ゴルトもそれは十分すぎるくらい自覚しているのだろう。思いと立場が彼女を実年齢よりずっと大人びた姿に見せているのだ。 「貴様、警察機関(あいつら)の下請け仕事なんてしてないでわたしの元に来ないか? その腕があるならこの世界でやっていけるだろ」 「……それは遠慮します」  丁寧に断ってから、降夜は傍らに居るゴルトにちらりと視線を転じた。  この女──いや、この少女、意外と複雑で危うい立場に居ると見受けられる。暴力と傲慢で、だからこそ鎧っていかなければ生きられない社会。しかしそんな世界が果たして彼女に相応しいか。 「早く辞めることです、ミサ。マフィアのボスなんて、気の強さで務まるもんじゃない」  ゴルトが息を呑む。痛いところを突かれたという表情か。
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