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※ ※ ※
「女のラッパーってのも珍しいわね」
煙草の煙を吐きながら、女が言った。
赤の衣服に身を包んだ、20代半ばとおぼしき派手な印象の人物である。
担当刑事のガーネットよ、と彼女は名乗った。
30分前、薄緑の「眼」が届き『ネーベン・ガッセ』はざわついた。
すぐさま通報すると、この街では珍しいくらい早くに事件の担当者という女刑事と、その相棒の新米刑事がやって来たのだ。
説明を求めて食い入るように自分を見つめる店の一同を見回して、ガーネットはせわしなく煙を吐き出す。
「これで連続殺人になったわけね」
「さ、殺人って……その眼の主が死んだとは限らないでしょう」
黙りこむ兄を気遣うように弟が口を開く。
「それにその眼がうちの歌手のカンナさんかどうかも……」
分からないでしょう、という語尾は弱々しかった。
薄い緑色が印象的な眼球。
ゴット・シュヴェルツェンでこの眸の持ち主は、Kが知る限りカンナだけだ。
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