その目(1月7日)

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   ※  ※  ※ 「女のラッパーってのも珍しいわね」  煙草の煙を吐きながら、女が言った。  赤の衣服に身を包んだ、20代半ばとおぼしき派手な印象の人物である。  担当刑事のガーネットよ、と彼女は名乗った。  30分前、薄緑の「眼」が届き『ネーベン・ガッセ』はざわついた。  すぐさま通報すると、この街では珍しいくらい早くに事件の担当者という女刑事と、その相棒の新米刑事がやって来たのだ。  説明を求めて食い入るように自分を見つめる店の一同を見回して、ガーネットはせわしなく煙を吐き出す。 「これで連続殺人になったわけね」 「さ、殺人って……その眼の主が死んだとは限らないでしょう」  黙りこむ兄を気遣うように弟が口を開く。 「それにその眼がうちの歌手(ラッパー)のカンナさんかどうかも……」  分からないでしょう、という語尾は弱々しかった。  薄い緑色が印象的な眼球。  ゴット・シュヴェルツェンでこの眸の持ち主は、Kが知る限りカンナだけだ。
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