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「ボ、ボスと呼べ。貴様……」
それには返事をせず、降夜は手を止めた。
「これで良し」
起爆装置解除完了。
「ミサ、もう帰れ。僕はマフィアの依頼は受けない。厄介事に巻き込まれたくないからな」
「なに……?」
打ち解けかけていたゴルトの表情が一瞬のうちに強張る。
「僕は裏街のただのボディーガードだ。マフィアの女ボスを守る自信はないよ」
2人の周囲を取り巻く空気が凍えた。
「貴様……、頼んでいるのではない。このわたしが命令しているのだ。貴様に断る権利はない!」
彼女の右手が翻った。射抜くように鋭い銀が、降夜の額を真っ直ぐに捉える。
「わたしに従え、降夜!」
鋭い殺気が迸り、降夜は悟った。
この女、本気だ。返答次第によっては今この場で僕の頭を撃ち抜くだろう。
泣き喚いていたガーネットがぎょっとしたようにこちらを向くのが視野の端に捉えられる。
しかしあてにはなるまい。新米刑事共々その場で硬直しているのが分かる。
──わ、分かった。依頼を受けよう。
降夜は頷きかけた。一旦マフィアと関わってしまったら、最終的に待っているのは非業の死のみであろう。
だが、何もそれに向かって急ぐ事はない。今、路上で射殺されるなんて、こんな不本意な死に方は御免だ。取り敢えず時間を稼ごう──そう考えたのだ。
しかしその時だ。白い少女がすたすた歩み寄ってきたのは。
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