ミサ・ゴルト・クレーバー(1月10日・2)

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 シルヴァー+クロイツはマフィアにさらわれたらしい。それは恐らく彼の技術(ウデ)を狙っての事だ。  この街のマフィアはキング派とゴルト派に分かれている。  単純に考えてゴルトがシルヴァー+クロイツ誘拐に関わっている確率は半分となる。  更にシルヴァー+クロイツ秘蔵の銃を持っている事──これが事実ならば、誘拐犯がゴルト一派である事は確定的と言えよう。  ──ややこしい事になってきたぞ。  降夜の前で2人の女が争いを始めた。 「シルに何したの! コレ返して!」 「痛い! 放せ、クソ餓鬼が!」  髪をつかみ、取っ組み合いながら銃を奪い合っている。 「やめろよ、危ないだろ。2人と……も……」  タタタッ──。軽い銃声が耳を刺す。降夜の髪の毛が数本、風に舞った。 「なに……?」  銀の銃が煙を吐いている。それを抱えながら、2人の女が呆然とこちらを見詰めていた。  争っているうちにどちらかが引き金を引いてしまったのだ。  幸いな事に、というべきか。銃弾は降夜の顔面すれすれを掠め、虚空に消えた。 「僕を……」  声が掠れた。 「僕を殺す気か!」 「ごめんなさい」  真霧が素直に謝った。  ゴルトは謝りはしなかったが、複雑に表情を歪めて背を向ける。 「貴様も機敏に避けろ、これくらい。ほら、帰るぞ」  そんな無茶な、と逆らいたかったがグッと堪える。  明らかに降夜の家の方角へ向かって女ボスは歩き出していた。  ──信じられねぇ、この女……。 「ごめんなさい、降夜さん。怪我しなかった?」  すまなさそうにこちらを見上げる真霧に、引き攣った笑顔を向ける。  ──この子も信じらんねぇとこあるな。 「帰りましょう、降夜さん」 「うん。え? 帰るってうちに? エット……何であなた方も一緒なのかな?」  さり気ない皮肉を、彼女達は聞いちゃいない。  2人の依頼は絶対に断るぞ。あらためて深く決意して、降夜は帰路についた。
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