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シルヴァー+クロイツはマフィアにさらわれたらしい。それは恐らく彼の技術を狙っての事だ。
この街のマフィアはキング派とゴルト派に分かれている。
単純に考えてゴルトがシルヴァー+クロイツ誘拐に関わっている確率は半分となる。
更にシルヴァー+クロイツ秘蔵の銃を持っている事──これが事実ならば、誘拐犯がゴルト一派である事は確定的と言えよう。
──ややこしい事になってきたぞ。
降夜の前で2人の女が争いを始めた。
「シルに何したの! コレ返して!」
「痛い! 放せ、クソ餓鬼が!」
髪をつかみ、取っ組み合いながら銃を奪い合っている。
「やめろよ、危ないだろ。2人と……も……」
タタタッ──。軽い銃声が耳を刺す。降夜の髪の毛が数本、風に舞った。
「なに……?」
銀の銃が煙を吐いている。それを抱えながら、2人の女が呆然とこちらを見詰めていた。
争っているうちにどちらかが引き金を引いてしまったのだ。
幸いな事に、というべきか。銃弾は降夜の顔面すれすれを掠め、虚空に消えた。
「僕を……」
声が掠れた。
「僕を殺す気か!」
「ごめんなさい」
真霧が素直に謝った。
ゴルトは謝りはしなかったが、複雑に表情を歪めて背を向ける。
「貴様も機敏に避けろ、これくらい。ほら、帰るぞ」
そんな無茶な、と逆らいたかったがグッと堪える。
明らかに降夜の家の方角へ向かって女ボスは歩き出していた。
──信じられねぇ、この女……。
「ごめんなさい、降夜さん。怪我しなかった?」
すまなさそうにこちらを見上げる真霧に、引き攣った笑顔を向ける。
──この子も信じらんねぇとこあるな。
「帰りましょう、降夜さん」
「うん。え? 帰るってうちに? エット……何であなた方も一緒なのかな?」
さり気ない皮肉を、彼女達は聞いちゃいない。
2人の依頼は絶対に断るぞ。あらためて深く決意して、降夜は帰路についた。
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