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魔法使いが集めたもの
トレーネはソールの体から優しく、そして丁寧に鱗を数枚剥がしていくとそれを自分の肌へと貼り付ける。
そしてソールの角や牙、爪をいくらか拝借してそれに加工の魔法をかける。するとそれらは刺々しく不気味で、見る者に恐怖を与える異形の鎧へと変わった。
トレーネは鎧を纏い、大きな角がついた兜を頭にすっぽりと被る。自身の鎧姿を鏡で確認すると、敬愛するトレーネに少しは近づけたようで嬉しくなる。
「それでは行って参ります。我が師にして我が母である、偉大なる魔法使い・ソール。ぼくは必ず全ての魔物を殺し、この世に安寧をもたらします」
綺麗にしたソールの亡骸に防腐と保存の魔法を施したトレーネは深々と頭を下げてから砦を出る。
そしてこの思い出の砦とソールの亡骸を荒らされぬように強力な結界を張った。
「さて、まずはどこへ向かおうか。……ああ、そういえばこの近くに魔物の村があったんだった。まずはそこから根絶やしだ」
遠くに見える民家の明かりを目指し、後に“魔王”と呼ばれることとなる少年は歩き出す。
魔法使い・ソール、彼女が人々を救う為に懸命に集めた108の呪いは彼女の死、厳密にはその肉体が滅びることでこの世から消え去ることとなっていた。
しかし、ソールを完全に失いたくないという切なる思いからトレーネが彼女に施した魔法。その魔法がソールを滅びることを許さない。
そして彼女の体のパーツで出来たトレーネの鎧には、108の呪いの断片が宿っている。
魔法使いが集めたもの、それは世界を狂わせる強力な呪い。
そしてその呪いは魔法使いの死と共にまた世界へと解き放たれるのであった。
《終》
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