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盲目の少年
107の呪いを集めたソールはエルフの原型を留めていなかった。
腐臭のする緑の血をドロドロと流し、這いつくばるように移動する彼女はどこからどう見ても魔物。それも魔物の中でも特別醜い姿をしている。
とある満月の夜、旅を続けるソールは廃砦の前で少年に出会う。
少年は砦の城門を背凭れにして座り、ぼうっと空を見上げていた。
ソールがズルズルと近づいて行くと、少年は言う。
「そこにいるのは誰? 盗賊ならごめんよ、ぼくはお金なんて持っていないんだ。人拐いでもごめんよ、ぼくは生まれた時から目が見えないから値打ちがないよ。だからこうして捨てられているんだから」
少年は淡々と続ける。
「色んなお医者様や僧侶様がぼくの目を治そうとしたけど駄目だった。悲しみ疲れた両親はぼくをここへ置いて行ってしまったんだ。当然だよ、ぼくは役立たずだからね」
自嘲する少年の直ぐ目の前まで来たソールはぎこちない動きで前足を上げる。
「ぼくはこのままここで死ぬんだろうね。……ああ、だけど一度でいいから“美しいもの”をこの目で見て死にたかったなぁ」
ツーと流れる少年の涙をソールは爪の先で拭う。
すると。
「あ、れ? 何だ、これ。……え、あれれ? ぼくの、目が、目が、目が見えるっ!!」
にわかに騒ぎ始める少年にソールは肩の荷が下りたようだった。何故ならこれで108の呪い全てを集めきることが出来たのだから。
あとは人が寄りつかない場所で命を絶ち、呪いと共にあの世へと行くだけだ、ソールはそう思ったのだが……。
「ああ、何て綺麗な人だ! あなたはぼくの命の恩人です! 」
少年はとびきりの笑顔でソールへ抱きついた。
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