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夜の出来事
トレーネがソールと廃砦で暮らしはじめて3年が経ったある日の夜の出来事だった。
自室で魔法の巻物を読みながらうたた寝していたトレーネは物音を聞いて目を覚ます。
部屋の外から聞こえるその音はガタガタとまるで暴れ回っているかのようで、かすかに声のようなものも聞こえる。
トレーネは一体何事かと恐ろしくなったが、もしかしたらソールが苦しんでいるのかもしれないと考え机のランタンを掴んで急いで部屋を飛び出した。
「ソール様、ソール様!」
叫びながら走っていると、廊下の角が明るい。ソールの灯火の魔法だと思ったトレーネがスピードを上げて角を曲がると、そこには予想外過ぎる光景が広がっていた。
「……この魔物、全く反撃してきませんでしたね」
「いいじゃない、その分楽が出来たんだから!」
「それじゃあ角や鱗がを剥ごうゼ。きっといい武器や防具になるゾ!」
床は一面緑色で、壁や天井には緑の飛沫。その緑の正体はソールの体から流れる血液だ。
緑の血溜まりに浮かぶソールはぴくりとも動かず無数の傷から血を流し続けるだけ。そしてそんな彼女を見下ろす男女が4人。
その者らは手には血の滴るナイフや剣、魔力を帯びた弓や杖が握られている。
「うん? 子ども?」
その内の一人、剣を持つ青年が呆然と立ち尽くすトレーネに気がつく。
「僕達は村人達に依頼されてこの廃砦の魔物退治にやって来たんだ。もしかして君はこの魔物に誘拐された村の子どもかい?」
トレーネは顔を伏せ、ぶるぶると震える。
「安心してくれ、魔物は僕達が殺した。さぁ、一緒に村へ戻ろう」
青年は怖がる子どもを安心させようと小さな肩にそっと手を置いた。しかし。
べしゃり、そんな音がしたかと思うと、青年はトレーネの肩に手だけを残して頭からぺしゃんこに潰れてしまった。
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