出会い

1/1
前へ
/137ページ
次へ

出会い

彼との出会いは、大学に入ってすぐだった。 生活環境も親との関係もよく似た二人は、すぐに仲良くなった。 始めて顔を合わせた日、彼の笑顔に見惚れた。 白くきれいに並んだ歯が眩しかった。 精悍な顔に逞しい身体、握手しようと差し出した手を大きな手で握り返され、その力強さに圧倒された。 母一人子一人の翔太(しょうた)は、奨学金とアルバイトで大学生活をスタートさせた。 そして、彼も父親との二人暮らしだった。 入院中の父親に収入はなく、翔太(しょうた)と同じ奨学金とアルバイトの生活だった。 優しく穏やかな翔太(しょうた)とは反対に、剛気で快活でそのくせ甘えたがりな男。 二人は直ぐに意気投合すると同時に恋仲になった。 女を抱いたこともない二人が、探り合うように快感を求めて、どこまでも貪欲に相手を求め合った。 貪るようにお互いを求め、毎日のように身体を重ねた。 優しい言葉と甘い囁き、そんな生活は貧しさを忘れさせた。 お互い医師となる希望を胸に、切磋琢磨しながら日々アルバイトと学業に励んだ。 生活費を節約するために、一緒に暮らす事にしたのも、少しでも離れたくなかったからだった。 彼の名前は松永 龍太郎(まつながりゅうたろう)、長身でガッチリとした体躯は、中学高校でラグビーで鍛えられたと言った。 笑うと幼さが残る笑顔が甘い雰囲気に変わり、翔太(しょうた)の胸をくすぐった。 付き合うようになってからは、翔太(しょうた)に執着する様に、いつもそばを離れなかった。 アルバイトも同じコンビニに変更して、同じシフトで働いた。 朝起きた瞬間から、眠りにつくまでずっと一緒だった。 アルバイトのない日は大学の図書館が自分達の勉強部屋だった。 西日の差し込む図書館は、外が暗くなると誰もいなくなる。 受付の目につかない場所が自分達だけの秘密の場所だった。 向かい合ってノートに鉛筆を走らせる。 微かな音に混じる胸のときめきが、相手にも聞こえている様で落ち着かない。  時々机の下でコツンと当たる靴先まで、意識してしまう。 彼の熱量と自分の熱量の違いが気になった。 一緒に暮らし毎晩のように身体を重ねているのに、どこか満たされない顔をする龍太郎(りゅうたろう)。 焦躁と不安とに虐まれ、たまに狂ったように嫉妬する。 龍太郎(りゅうたろう)を安心させるためなら、なんだって我慢できた。 噛み付くような口づけも、痛みを伴う愛撫も、好きだからと思えば嬉しかった。 龍太郎(りゅうたろう)の行為はどれもこれも激しく熱かった。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加