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ジェラシー
いつもの様に目覚めた朝、翔太の身体に絡まるように乗せられた龍太郎の腕と脚を払いのけ、ベッドから起き上がった。
昨日叩かれた尻がジンジンと痛み、羞恥と腹立たしさでムカついてくる。
それでも指に輝くプラチナのリングを見ると、やっぱり嬉しくてたまらない。
ゆうべの痕跡を洗い流すために、バスルームへ行くと鏡に映った自分の首筋には、赤くなった歯形がくっきりと浮かび上がっていた。
これではワイシャツでも隠せないと、呆然となる中とりあえずシャワーを浴びてTシャツを着た。
海堂が朝ごはんを食べにくると言うのに、こんなのは見せたくなかった。
仕方なく喉が痛いふりをして、湿布を貼って上からスカーフを巻いてみた。
どうみても不自然だけど、あんな歯形を見られるよりはずっといいと、開き直って朝食の準備に取り掛かった。
暫くして玄関のチャイムと共に、海堂君が現れた。
今朝も相変わらず爽やかな笑顔で挨拶をする海堂君!
「翔太先生、おはようございます。朝ごはんいただきに来ました」
「おはよう!どうぞ、今準備してるから待ってて」
「僕お手伝いします」
「それじゃぁ、珈琲淹れてくれる?」
「はい、翔太先生どうしたんですか?風邪ですか?」
「ちょっと・・・・・喉が痛くて」
海堂君の心配そうな目で見られると、自分が恥ずかしくて仕方がない。
ゆうべの自分の姿を思い出して、顔が赤くなるが分かった。
首筋の歯形も赤くなった尻も、この純情そうな青年には想像すら出来ないだろうと思うと、なんだか急に自分が淫らで汚れた大人になった気がして落ち込んだ。
そんな翔太の気も知らず、龍太郎が呑気な顔で部屋から出てきた。
上半身裸で寝乱れた雰囲気満載の龍太郎は、翔太の横で朝食の準備をする海道を見た。
「海堂、早いな」
「社長、おはようございます。お言葉に甘えて朝食をいただきに来ました。」
「そうだったな遠慮なく食べていけ」
龍太郎は、翔太の首のスカーフに目を止めた。
それが何のためかは、充分理解していた。
「翔太、おはよう」
「おはよう」
翔太は顔も見ないで、そう言った。
海堂は気づかない振りで、パンを焼き珈琲をカップに注いだ。
シャワーを浴びた龍太郎が、髪をタオルで拭きながらテーブルに座った。
三人揃って朝食を食べ始めた時、海堂がいきなり声を上げた。
「社長!指輪・・・・・翔太先生も・・・・・」
「海堂、声がでかい」
「すいません・・・社長それってあれですか?」
「アァ、そうだ」
「翔太先生・・・・・」
海堂が翔太の首のスカーフに視線を向けた。
「社長、翔太先生、おめでとうございます。」
「海堂君・・・・・ありがとう。改まって言われると恥ずかしいな。でも、嬉しい」
翔太は素直に礼を言った。
海堂の気持ちを知ってか知らずか、翔太は嬉しそうに顔を赤く染めた。
龍太郎は、そんな翔太が愛しくて堪らない。
翔太を見つめる海堂の視線に嫉妬の炎が燃え上がった。
「海堂、食べ終わったら部屋へ来てくれ。今日のスケジュールの確認をしておきたい」
食事を終えた龍太郎が、海堂にそう言い終えると席を立った。
「はい」
海堂は急いで食事を終えると、龍太郎の後に続いて部屋へ入った。
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