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恋なんてするもんじゃない③
栞里から頼まれた駐在所の掃除もやっと終わる。
一階の床の間に敷こうと持ってきた白いウッドカーペットを車から取り出して、担いだ時だった。
隼人は『蜿り橋』を渡ってくる、彼を見た。
スーツ姿の彼は、親しげに隼人に微笑んでくる。
隼人の時間が全て止まった。
身動きが全く出来なくなる。
彼から何かを言われたが、耳鳴りがしてよく聞こえない。
ああ、名前を訊かれたのか——。
そう察し、自分の名を名乗ろうとしたが、上手く口が動かない。
沢木がやって来てくれて助かった。
彼の興味は沢木に移ったようだ。
彼からの視線が外れて隼人はホッと息をついた。
やっと落ち着いて彼を見る。
細い体。
白い首筋がなんとも美しい——。
美しいだと!?
男じゃないか!!
隼人は自分の感情に驚いた。
不意に彼がこちらを見る——長い睫毛。なんの邪心もないような澄んだ瞳——隼人はカッと頭に血が上り、すぐに顔を反らした。
ウッドカーペットを担いで、駐在所の中に入る。
いったい自分は、どうしてしまったんだ——。
隼人は作業に戻りながら、今の自分の感情を分析しようと試みた。
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