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【1】
──あたしとそっくり同じ、もうひとり。
真央には一卵性双生児の妹がいた。
まるで鏡の中の自分のようだ。同じ遺伝子、同じ顔、同じ長さの髪、洋服の色だけが見分ける方法だと認識されている。
しかし実態は違っていた。
妹の未央はおとなしくて引っ込み思案だ。積極的で自己主張の強い真央とはまったく似ていない。
似ていない、のにも関わらず、皆が一様に「そっくり!」と口にする。いったい二人の何がその目に映っているというのか。
真央と未央のことなど、所詮誰も見てはいないのだろう。結局は表面だけに過ぎないのだ。顔にしても、作りは同じでも性格の出る表情はまるきり別なのだから。
「真央ちゃん、はいこれ。新しいお洋服よ」
母に渡されたワンピースは、いつも通り真央には水色で未央にはピンクだった。
文字通り同一の色違いということも多いが、今回はお揃いではないらしい。前にボタンの並んだ水色と、レースで飾られたピンク。
「ピンクがいい! 今度はあたしがピンク着るの! ね? いいよね、未央! いっつもピンクなんだから!」
「う、うん──」
未央が手にした服を掴んで我が物にしようとした真央は、顔をしかめた母に叱られてしまった。
「ピンクは未央ちゃんよ。真央ちゃんには水色の方が似合うから。……もう三年生なんだから我儘ばっかり言わないで」
何故勝手に決めつけるのか。真央はピンクが好きなのに。
幼稚園の頃から何一つ変わらない。可愛くて目を惹かれるものは、すべて未央に行ってしまうのだ。
水色は真央が、つまりピンクは未央の方が「似合う」ということだろうが、同じ顔なのに何を言っているのか理解できない。
──だって、いっつもみんなそう言うじゃない。「そっくりおんなじね」って! 意味わかんない!
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