霜雪に往きてかへらぬ

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「太郎は、ここにおる誰かに殺されたんぢゃ」  と、またしても父が仰いました。その通りでございます。私が彼の湯呑に毒を盛り、命を奪ったのでございます。  そして、犯人探しが始まりました。 「全員、着ちょる服を脱げ」  我々は、父の命令に従うほかありませんでした。その際、私は懐に隠していた小瓶をどこかに隠さねばならぬと考えました。しかしながら、周囲の目もあり、不用意に動けば犯人と疑われる恐れがございました。  故に、隣にいたお雪の着物の帯に、そっと小瓶を忍ばせたのでございます。
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