初日ここまで

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初日ここまで

 ここにて、私の生まれた地方に伝わる口減らしの方法をお伝え申し上げます。選ばれた子供を山へ連れて参るのです。  昔は、神様のお嫁さんとなるなど大変名誉なことであり、皆が競って娘を差し出したものでございますが、明治の御代になりましてからは、そのような装飾もなく、単に貧しい農村が生計を立てるための口減らしと化しましたゆえ、当然子供は泣きわめき、嫌がるのでございます。そのため、縄で体を縛るのです。  当然、お雪もまた暴れぬよう、逃げ出さぬように体を縄で縛られることとなりました。そして、その縛る役目を担ったのは、私でございました。 「おにい、うちゃやっちょりません。太郎おにいを殺してなどおらんぢゃ。どうか信じてくれん」  と、お雪は何度も、何度も涙を流しながら私に訴えてくるのでございます。  真相を知る私には、罪悪感が胸を圧しつぶし、生きた心地がしませんでした。
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