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 夕方、今日も一日瑞貴の教育でくたくたになって会社を出る。正直、瑞貴は仕事がかなり出来る。入社数年の若手なんかよりも、いや、秘書課で一番といっていいほど出来る。あれは他部署でもトップ争いするだろう。  だから何かを教えようと思っても、その教え方を品定めされているようで、最近はかなりプレッシャーになってきていた。    改札手前でカバンからスマホを取ると、嵯峨からの不在着信に気づいた。 「え、また?」  折り返すわけもなく、そのまま駅の改札を抜けて京葉線のホームまで歩き出す。東京駅の会社最寄りの改札からだと、京葉線ホームはかなり遠く、その間は頭の中は嵯峨ではなく、瑞貴の事でいっぱいだった。    本当に何なんだあのトドは? 不愛想で、偉そうで、めんどくさい。誰が高身長ハイスペックイケメンって言った? 確かに縦にデカいが、横にもデカい。ハイスペック? 海外の大学院出たからって、無駄に頭の回転速くてウザいだけだし、ここは日本なんだから日本の常識をまず覚えろ。先輩を敬え。  そしてどこがイケメンよ? モデルのエリカの元カレって話は何??? 「これだから噂話ってやつは信用ならないのよっ!!」 「何か面白い噂でもあったんですか?」 「いいっ」  すでに京葉線ホームに着いており、いつの間にか隣でトドがバナナを食べて立っていた。 「何でここに? っていうかバナナ?」 「栄養補給にいいですよ。いります?」 「食べかけのバナナなんかいるかっ!!」  お前は本物のトドか!  ※トドは通常バナナは食べません  電車が到着し、トドには構わず先に電車に乗り込み席に座った。彼は私の席から離れたドアの前に立った。    こちらに背を向けているトドを、なんとなく見つめる。いや、キッと睨んでやった。  あいつはダサいリュックを高い位置で背負い、両手で肩ひもをしっかりと握っていた。  ダサい。ダサすぎる。  性格も難あり。  御曹司だろうと、頼まれたってあれはお断りだ。
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