2ー5

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 最初は絶叫系のアトラクションから始まり、ツアー形式のアトラクションを体験したり、空飛ぶゾウにも乗った。  相手は不愛想なトドだというのが信じられないくらい、とにかく笑ってしまい、人生で初めてといっていいほど楽しかった。  お城の近くで座らされて、どこかに行ってしまったトドを待っていたら、トドは何かを買って戻って来た。  トドはお土産用の袋の中をゴソゴソして中身を取り出すと、それは何度も遠くから、指をくわえて見ていたカチューシャだった。    トドはそのカチューシャを私の頭につけてくれる。 「お、いい感じですね」  そう言って、袋からもう一つカチューシャを取り出して、自分の頭にもつけた。 「え? あなたもつけるの?」 「当たり前じゃないですか」  急にパーンッと大きな音が鳴り、トドの後ろに綺麗な花火が打ちあがる。    趣向を凝らして造られた美しい園内と、夜空に輝く大輪の花。流れている音楽もロマンチックで高揚感を高めていく。  そして、それらを背景にして立ち、こちらを見つめる背の高い男性。  スーツ姿にリュックを高い位置で背負い、夢の国のカチューシャを戴冠したトド……。  ああ……人生初の夢の国を、なぜ私はトドと来てしまったのだろう……。 「瑞貴……ありがとう。さあ、明日も仕事があるし、帰りましょう」 「せっかく来たのにもう帰るんですか? まあいいや。意外と楽しかったです。ありがとうございました」  そうね。私も意外と楽しかったわ……。  虚しい思いも入り混じりながら、そう心の中で呟いた。
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