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「嵯峨さん、彼女いるのかなあ?」 (い・る・よ) 「あんなにカッコよくてハイスペックならいるでしょ。年齢も三十二だよ? まだ独身なのが奇跡だよ~」 (うんうん、本当、まだ残っててくれたのが奇跡)    私の人生は、思い返せば、シングルファザーの貧乏家庭で育ち、母がいない代わりに弟の面倒と、家事を一通りし、青春時代は着飾ることも出来ず、漫画のようなスクールラブも経験せずに、一瞬で過ぎ去った。  将来は絶対にキラキラした人生を歩むと決めて、死に物狂いで勉強し、奨学金を満額で借りて国立大学を卒業し、尋常じゃない倍率を潜り抜けてこの一流企業に就職して、弟も独り立ちし、キラキラマイウェイを順調に歩み始めていた。  奨学金返済費用、プロポーション維持のためのジム代、綺麗なゆるふわロングヘアーを維持するための美容代、ボーナスとセールを駆使して十代で出来なかったオシャレを目一杯して、これらを賄うために切り詰められるところは徹底的に切り詰める生活だけど、それでも今がとても充実している。美しくあるため、瞼だってアイテープでばっちり二重にしている。    そして、キラキラ人生計画最後のミッションは、高学歴、高身長、高収入、そしてイケメンであるスーパーハイスペックな旦那を捕まえ、可愛い子供に恵まれた幸せな家庭を築く!  そしてそして、とうとう、三十歳を迎える今年、私は滑り込みで捕まえた! 嵯峨宗一郎という最優良物件を!!
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